2017年10月からフラット35は制度を新しくしたことで、再び注目を集めているようです。
今回は普段あまり注目される機会の少ないフラット35保証型とフラット35Sを取り上げ、フラット35との違いについてみていきたいと思います。
フラット35保証型を知るとフラット35の成り立ちがわかりますし、フラット35Sを知るとフラット35の技術基準の高さに気付かされます。
フラット35保証型とは
フラット35には保証型のほかに買取型が存在します。
じつはフラット35と一般的に言われているのは買取型のほうです。
なぜなら買取型のほうが圧倒的に数として多く、保証型を扱っている金融機関はモーゲージバンクを中心とした3社のみなのです。フラット35保証型は、フラット35のなかでも言わばレアな存在です。
この2つは、仕組みの上でも成り立ち方が異なります。
メインの買取型は融資金を利用者が受けとった後、機構が金融機関から住宅ローンを買い取ります。そして買い取った住宅ローンを担保に債券を発行すると、投資家から資金を調達する仕組みになっています。
これに対して保証型は機構が金融機関の保険会社となります。そして住宅ローンを債務者が返済出来なくなると、機構が保険金(ローン残債務)を支払うことで債務者の住宅ローン債券を取得します。
このように2つの異なる仕組みを用いて、民間の金融機関だけでは実現出来なかった長期固定金利型の住宅ローンを実現させたのがフラット35です。
なおフラット35保証型と買取型の違いはというと、当初保証型は金融機関(おもにモーゲージバンク)独自のプランに魅力がありました。ところが長らく運営してみると、機構団信をはじめとする機構そのものの商品力に保証型が押されるようになります。こうして次第に保証型と買取型の違いはなくなってきつつあります。
その点を踏まえて、フラット35保証型の利用条件や手続の仕方をみていくことにしましょう。
フラット35保証型の利用条件
フラット35保証型の利用条件を、かんたんにまとめてみました。
【申込要件】
- 申込時が満70歳未満。
- 親子リレー返済の場合は親の年齢が満70歳以上でも可。
【資金使途】
- 申込み本人または親族が住む新築住宅の建設・購入資金または中古住宅の購入資金など。
- 要日本国籍/永住許可権
【借入対象となる住宅】
- 住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合している住宅。
- 戸建住宅の床面積が70㎡以上。
- 共同住宅の場合は30㎡以上。
- 住宅の建設費または購入価額が1億円以下(消費税込み)。
【返済負担率】
年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下。
【融資期間】
最長35年。
【申込先金融機関】
2017年10月時点で新規受付を行っている金融機関は以下の3機関です。
- 日本住宅ローン株式会社
- アルヒ株式会社(旧SBIモーゲージ)
- 財形住宅金融株式会社
【融資額】
100万円以上8,000万円以下(1万円単位)とし、尚且つ建設費または購入価額の9割または10割まで。
【金利】
金融機関によって異なります。
【返済方法】
元利均等毎月払いまたは元金均等毎月払いを選択できます。
【担保】
借入対象となる住宅およびその敷地に、各金融機関を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定します。
【保証人】
原則不要です。
【団体信用生命保険】
任意加入。
フラット35保証型は基本的に機構団信が使えなかったのですが、現在新規募集をしているところでは問題なく新機構団信が使えている状況です。
【火災保険】
- 火災保険は時価ではなく新価で契約。
- 保険期間、火災保険料の払込方法、火災保険金請求権への質権設定の取扱いは金融機関により異なります。
【物件検査手数料】
物件検査手数料は検査機関または適合証明技術者により異なり、原則申し込み者負担です。
【借り換え・繰り上げ返済について】
フラット35保証型は原則的に借り換え・繰り上げ返済は出来ませんでしたが、現在では金融機関独自に借り換え・繰り上げ返済プランが用意されています。
以上がフラット35保証型の利用条件ですが、ここで注意が必要なのは【団体信用生命保険】【借り換え・繰り上げ返済について】の2つです。
フラット35保証型は、原則として金融機関の提供する団信制度に加入し、特約料の取扱いは金融機関によって違っていました。しかし現在では買取型と同じように新機構団信にも加入できます。団体信用生命保険については、買取型と同様と考えて問題ないでしょう。
【借り換え・繰り上げ返済について】も金融機関独自のプランで、借り換えや繰り上げ返済が使えています。したがって原則不可ということは、現在はありません。
財形住宅金融株式会社とは
最近の住宅ローン市場では触れられることは減りましたが、財形住宅融資(通称「財形」)は非常に優良な住宅融資であり、フラット35の保証型プランも用意しています。そこで、この場を借りて財形住宅融資を紹介しておきましょう。
「財形」とは厚生労働大臣登録の福利厚生会社で、昭和57年設立以来、企業の社内住宅融資制度の外注先として全国約9,000社の企業・職場(公務員等)と提携しています。
「財形」を利用するには勤務先(常用労働者数が300人以下の企業)が「財形」と提携していなければなりません。そして下記の要件を満たしている必要もあります。
- ご自身が所有及び居住するための住宅を取得又はリフォームする方
- 継続する1年以上の期間にわたって、いずれかの種類の財形貯蓄を行っている方
- 借入申込日の2年前の日から借入申込日までの期間内に、財形貯蓄契約に基づく定期の積み立てを行っている方
- 借入申込日において50万円以上の財形貯蓄を有している方
- 事業主等から負担軽減措置(※)を受けられる方
※事業主等が、勤労者に対して融資額の1%に相当する額(3万円を超える場合は3万円)以上の額を5年以上にわたって支給することなど、勤労者の返済負担の軽減がなされている必要があります。
[ 負担軽減措置の例:住宅手当として月2,500円を5年間支給 ]
[財形持家転貸融資の貸し付け金利引き下げ特例措置|勤労者財産形成事業本部](http://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/tokurei/index.php)より
つまり勤務先が財形住宅融資と提携し、そこに勤務する住宅ローン申し込み者が所定の積み立てを行っていると「財形」の5年固定の低金利ローンが使えます。こちらのローンは、2017年10月時点ですが、当初5年間通常の金利0.67%→0.47%で借りられます。5年固定でもこれぐらい抑えていれば、まず安心でしょう。
このほかにも、財形貯蓄がなくても申し込める「フラット35エース(保証型)」「財住金フラット35(買取型)」もあります。
(勤務先が「財形」と提携していることは変わらず必要です)
「フラット35エース(保証型)」と「財住金フラット35(買取型)」の違いは、フラット35エースのほうが金利設定が幾分低く、ほかの金融機関のフラット35と比べても金利の低さで1、2位を争う設定です。
勤務先が「財形」と出資・提携している場合は、何れかの財形融資をぜひ活用しておきたいものです。
借りる際の手続方法と必要書類
住宅ローンの審査は通常2段階に分かれますが、フラット35は融資手続きは事前審査と本審査にきっちり分かれているのが特徴です。
フラット35保証型は各金融機関によって、審査の中身は違ってくるようです。ただ借りる際の手続方法と必要書類については、保証型も買取型も大きくは違っていません。
それでは住宅ローンを借りる際の手続や必要書類について見ていきましょう。
事前審査
事前審査は、フラット35保証型を利用する方の返済能力を簡易的にみるために実施されます。
事前審査は店舗でもウェブでも受け付けています。
ウェブでは下記書類に必要事項を入力しますが、店舗申し込みではウェブからダウンロードした下記書類を記入し持参します(事前にアポイントをとっておくとよりスムーズです)。また事前審査の書類は郵送も可能です。
<事前審査に必要な書類>
「保証型・長期固定金利型住宅ローン事前審査申請書・兼個人情報取り扱いに関する同意書」
名称は金融機関によって違いがあります。
なお事前審査は最短では当日、ないし数日かかることもあります。
なお、フラット35の事前審査には上記書類のほか、金融機関によっては下記書類も求められる場合があります。必要であれば準備しておきましょう。
- 本人確認書類(運転免許証・保険証など)
- 収入を証明する書類(源泉徴収票や確定申告書など)
- 物件の資料
本審査
事前審査が了諾されると、つぎは本審査です。本審査の主な目的は提出された書類に基づき詳しく審査されるとともに、担保物件や健康状態などもみられます。
ただし借りる際の手続方法や必要書類といった点で、フラット35保証型と買取型で目立った相違点は殆どありません。
やはり両者の違いは借りる際の手続等にあるのではなく、モーゲージバンクとしてのプラン、サービス自体の独自性にあると言えます。
<本審査に必要な書類>
本審査に必要な書類は複数にわたります。
通常は担当する営業マンが準備する書類を指示し、一部(物件に関する書類など)は揃えてくれます。したがってこれを全て利用者が把握し、覚える必要はありません。
【申込関連書類】
- 住宅ローンの申込書
- 団体信用生命保険の申込書兼告知書
【本人確認書類】
- 健康保険証
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
- 住民票基本台帳カード
(上記のうち何れか)
【収入を証明する書類】
(給与取得者の場合)
- 源泉徴収票
- 住民税決定通知書または課税証明書等
(事業収入取得者の場合)
- 所得税の納税証明書
- 確定申告書控および付表(決算書、収支内訳書等の一式)
【物件に関する書類】
- 不動産売買契約書
- 重要事項説明書
- 工事請負契約書
- 住宅地図
- 建築確認申請書・確認済証
- 検査済証
- 適合証明書
- 不動産登記簿謄本(土地・建物)
- 公図
- 地積測量図
- 配置図
- 建物図面
- 各階平面図/間取り図
本審査には通常それなりの日数を要しますが、最短では3日という短期間で審査が下りる場合もあります。
その後、金銭消費貸借契約に向けて面談を行い、指定の融資実行日に抵当権設定の手続きを行います。
なお金銭消費貸借契約で必要な書類を以下にまとめておきます。
すでに提出(準備)済みのものもありますので、融資担当に確認して新たに必要な書類だけ準備を進めてください。
- 不動産登記簿謄本(土地・建物)
- 収入印紙(20,400円分)
- 本人確認書類の写し
- 不動産売買契約書・工事請負契約書の写し
- 印鑑証明書2通
- 住民票(家族全員の記載があるもの)2通
- 銀行印
- 適合証明書(または住宅性能評価書の写し)
- 火災保険の申込書・領収書の写し
フラット35とフラット35保証型の違いまとめ
それではフラット35(買取型)とフラット35(保証型)の違いをまとめてみましょう。
フラット35(買取型)とフラット35(保証型)の違い
・フラット35保証型の上限融資額は10割までですが、フラット35(買取型)の上限融資額は9割まで(プランによっては9割を超えるものもあります)。
・フラット35保証型の団体信用生命保険は原則金融機関の提示する団体信用生命保険に加入しますが、現在は新機構団信が使えるためこれを継続して使っています。
・フラット35保証型は原則的に繰り上げ返済や借り換えが使えませんでしたが、いまでは独自プランで使えるように変わっています。
フラット35保証型と買取型の違いは、ある意味、申込先銀行の違いだけです。保証型と買取型の違いは、いまがいちばん分かり難い状況と言えそうです。
フラット35Sとは
フラット35Sとは、フラット35が標準的に備える技術基準に加え、フラット35S独自の技術基準をプラスし、金利条件を引き下げたプランです。
フラット35Sには2種類の金利条件(金利Aプランと金利Bプラン)があります。
金利Aプランは当初10年間、金利Bプラン当初5年間、所定の下げ幅が適用になります。
平成28年1月29日までの申込分については、この引き下げ幅が0.6%に拡大されて話題となりましたが、その後0.3%に変わり、2017年10月からは0.25%になっています。
フラット35Sの利用条件
フラット35Sはフラット35を技術基準で進化させており、利用条件はフラット35のものを踏襲しています。
従って前章で解説した「フラット35保証型の利用条件」で下記箇所を修正すると、フラット35買取型の利用条件になります(財形住宅融資を除く)。
【申込先金融機関】
2017年10月時点で新規受付を行っている金融機関は以下の3機関(モーゲージバンク)です→ 国内の銀行、地銀、信用金庫、ネット銀行など
【融資額】
建設費または購入価額の9割または10割まで → 9割まで
【借り換え・繰り上げ返済について】
原則的に不可 → 可能
※繰り上げ返済できる額は原則100万円以上です。なおインターネットで「住・MyNote」に登録すると、1回の返済額は10万円以上にも変更できます。
これに加え、フラット35Sは金利Aプランと金利Bプランに応じたフラット35標準以上の技術基準を備える必要があります。
以下にそれをまとめておきましょう。
【金利Aプランの基準】
<新築住宅・中古住宅共通の基準>
次の1~6のうち何れか1つ以上の基準を満たす住宅。
- 認定低炭素住宅(省エネルギー性)
- 一次エネルギー消費量等級5(省エネルギー性)
- 性能向上計画認定住宅(建築物省エネ法)(省エネルギー性)
- 耐震等級(構造躯体の倒壊防止)3(耐震性)
- 高齢者配慮対策等級4以上(共同住宅の専用部分は等級3でも可)(バリアフリー性)
- 長期優良住宅(耐久性・可変性)
なお、2、4、5の技術基準は「住宅の品質確保の促進に関する法律」の性能等級と同じです。住宅性能評価書を取得していなくても所定の物件検査に合格すれば「金利Aプラン」の技術基準に該当します。
【金利Bプランの基準】
<新築住宅・中古住宅共通の基準>
次の1~6のうち何れか1つ以上の基準を満たす住宅。
- 断熱等性能等級4(省エネルギー性)
- 一次エネルギー消費量等級4以上(省エネルギー性)
- 耐震等級(構造躯体の倒壊防止)2以上(耐震性)
- 免震建築物(耐震性)
- 高齢者配慮対策等級3以上(バリアフリー性)
- 劣化対策等級3、且つ維持管理対策等級2以上(耐久性・可変性)
なお、1~6の技術基準は「住宅の品質確保の促進に関する法律」の性能等級と同じです。住宅性能評価書を取得していなくても所定の物件検査に合格すれば「金利Bプラン」の技術基準に該当します。
<中古タイプのみ基準>
- 二重サッシ又は複層ガラスを使用した住宅(省エネルギー性・開口部断熱)
- 建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅(省エネルギー対策等級2以上または断熱等性能等級2以上)または「中古マンションらくらくフラット35」のうち、【フラット35】S(省エネルギー性(外壁等断熱)に適合するもの)として登録した住宅(省エネルギー性・外壁等断熱)
- 浴室および階段に手すりを設置した住宅(バリアフリー性・手すり設置)
- 屋内の段差を解消した住宅(バリアフリー性・段差解消)
以上がフラット35Sの利用条件です。
借りる際の手続方法と必要書類
フラット35Sは標準の技術基準に加え、金利AプランかBプランの技術基準を登録住宅性能評価機関等へ審査を出し、認定を受ける必要があります。
ただしこの審査書類を準備するのは不動産販売会社やハウスメーカーの設計部署の仕事で、フラット35Sを申し込む人には直接関与しません。
したがって「フラット35Sを借りる際の手続方法と必要書類」は、前章で示したフラット35保証型の手続きと基本的には変わらないと考えて大丈夫です。
なお、評価書が最終的に上がってくるのが、戸建注文住宅の場合は竣工時検査の段階、マンションなど共同住宅の場合は金融機関と金銭消費貸借契約を交わす前辺りとなっています。
一応タイミングだけでも押さえておくと安心ではないでしょうか。
審査書類および設計図書作成については、型式認定を取得している新築マンションや戸建のプレハブメーカーはそれほど作業に手間取りません。
ところが事前に型式認定等を取得していない自由設計型の木造のビルダーでは、書類の作成・準備に設計は膨大な労力を費やします。この点も理解しておくと良いかもしれません。
フラット35とフラット35Sの違いまとめ
以下にフラット35とフラット35Sの違いをかんたんにまとめてみました。
フラット35とフラット35Sの違い
フラット35 | フラット35S A(10年)/B(5年)プラン | |
---|---|---|
技術基準 | 標準 | 標準+A/Bプラン仕様に準じる |
物件検査料 | 約3万~6万円(地域の検査機関による) | 標準より高くなる(地域の検査機関による) |
適合証明書・評価書の交付時期 | 竣工検査終了後または金消契約前 | 竣工検査終了後または金消契約前 |
技術基準以外の手続き | - | 標準と変わらない |
金利下げ幅 | - | ▲0.25%(2017年10月時点) |
公庫ローンの時代から建物の技術基準が高かったという歴史があり、フラット35でもその歴史を引き継いでいることが分かります。
フラット35Sを使えば長期固定金利型の住宅ローンでも、金利のほうはまだ十分下げられます。
新築マンションを販売する不動産会社や高性能・高品質がウリの建築会社の建物は、フラット35Sで住宅建築を申請してみると良いでしょう。