2016年夏に、住宅ローンユーザーはマイナス金利を瞬間的に経験しました(住宅ローンユーザーとは、これから住宅ローンを借りる人も含んでいます)。ただそれ以降、少しずつ金利は上昇しています。
まだ先ののことは分かりませんが、この流れが続けばヒートアップ気味とも取れる住宅ローンの「借り換え熱」は新たな段階に進むと考えられます。
そのような端境期を目前とした住宅ローンの借り換えについて、チェックポイントを解説しているので、参考にして下さい。
- 【目次】住宅ローンの借り換えで比較する際のポイント
借り換えをする際に重要なチェックポイント
たとえ金利が上昇に転じたとしても、数ヶ月のうちに借り換えの意味が無くなるような変化は起きることはありません。ただ金利の微上昇が続けば、今までより借り換えの効果は薄まると考えられます。
以下に、借り換えを行う際に言われていたチェックポイントや注意点を挙げていますので、一緒にみていきましょう。
借り入れ時の金利と現在の金利との比較
住宅ローンを借り換える場合、いちばんに注目しなければいけないのが借り入れ時の金利と現在の金利との比較、つまり金利差です。
このサイトで何度か出てきますが、借り換えの際にチェックしておきたい3つのポイントがあります。
- 借り換え後の金利の差が1%以上ある
- 住宅ローン残高が1000万円以上残っている
- 返済期間が10年以上残っている
実際借り換えを行う場合、全てこの条件を満たしているわけではありませんが、借り換えを少なくとも損をしない前提で考えた場合、金利差はとても重要です。
金利差を意識しすぎるあまり、借り換えを執拗に躊躇することも考えられますが、どのぐらいメリットがあるかをみる場合、金利差は外せないポイントでしょう。
住宅ローンの金利タイプ
借り換えを進めるうえで金利差は重要なポイントだと説明しました。そして金利差と同じくらい大事なのが、どのような金利タイプを選択するかということです。
金利タイプとは変動や固定などの金利型のことです。
住宅ローンの金利タイプは大きく3つに分かれます。3つの金利タイプとは次のようなものです。
- 全期固定金利型
- 固定期間選択型
- 変動金利型
(なお(2)固定期間選択型は(3)変動金利型の仲間で、固定金利型ではありません)
このほかにも旧住宅金融公庫の公庫ローンも広い意味で固定期間型の金利タイプと言えますが、知っての通り旧住宅金融公庫が2007年3月いっぱいで廃止となり、住宅金融支援機構に生まれ変わっています。
そして米国の手法(住宅ローン債権の証券化)に習い、民間の金融機関とタイアップして誕生したのがフラット35です。
なお(1)の全期固定金利型とはフラット35のことです。
そして民間の金融機関(おもに銀行)が販売している住宅ローンが(2)の固定期間選択型と(3)変動金利型です。
住宅ローンの借り換えを検討する場合、3つの金利タイプのなかから自分に合った金利タイプを再検討します。再検討にあたっては、今後何度も借り換えしにくくなることを踏まえ、慎重に検討することが望まれることは言うまでもありません。
金利タイプで注意すべきこと
ここで注意すべきなのが、個人の住宅ローンは固定金利型が基本だということです。
なぜ固定金利型が基本かと言うと、低金利時代が長く続いたことで、いまのローンユーザーは変動金利のリスクをわからない方が多いと思われるからです。
変動金利タイプを選ぶこと自体が間違いとは言いません。しかし、それは変動金利型のリスク・弱点を熟知していることが前提です。またいつでも繰り上げ返済や借り換えに対応できる、ローン返済力の高い人が住宅ローンで変動金利タイプを扱っても大丈夫な人です。
変動金利型のリスク・弱点の一部を挙げてみましょう。
- 低金利が続く局面でも基準金利が下がらなければ支払額は変わらない。
- 変動金利は「5年ルール」と「1.25倍ルール」を備えているが、金利上昇の度合い強くなると未払い利息が発生する。
- さらに金利上昇が続いた場合、総返済額の増加や返済期間の延長などが起こってくる。
とくに(2)(3)が続くと、返済し続けているのに住宅ローンが減らないと言う現象も理論上は十分有り得ます。
だから皆さんのご両親の世代の方は、ここまで金利が下がると想像していなかったこともあるのですが、住宅ローンで変動金利型をいっさい採用しませんでした。
なお変動金利の「5年ルール」「1.25倍ルール」については当サイトの「住宅ローン、教育費、老後資金で必要な金額の目安について」のなかでも触れています。興味がある方はご一読下さい。
借り換えにかかる諸費用
住宅ローンの借り換えは、言わば新規申し込みと変わりません。そのため、当然のことながらローンに伴う諸費用はそのまま掛かります。
借り換えにかかる金融機関に支払う諸費用には以下の項目があります。
(ここで述べる諸費用は契約時のものではありませんので、不動産会社や住宅会社に支払う費用を除きます)
- 印紙代
- 融資事務手数料
- 保証料
- 抵当権設定登記費用
- 団体信用生命保険料
- ローン残金一括返済手数料
- 抵当権抹消登記費用
※(6)(7)は従前の銀行に掛かる費用
合計で70万ぐらい掛かるかもしれませんが、この分を別途準備しなければなりません。ただし借り換え融資の場合、諸費用分もローンに含めて融資してくれる場合が多く、ほとんど持ち出しせずに借り換えできます。
さらに火災保険はすでに契約済みのものを引き継ぎますので、初回に掛かった諸費用よりかなり少なくなっているはずです。また年数にもよりますが、一部保証料が返還される場合もあります。
借り換えには諸費用が確かに掛かります。ただ計算すると、それほど大きな金額にはならないでしょう。
借り換え後の繰り上げ返済も想定する
借り換えと繰り上げ返済。あなたならどちらを優先しますか?
知っている方はこの話は飛ばしてもらって結構ですが、よく分からない方はしっかり読み込んでもらいたい項目です。
もちろん先の質問に対する答えは、繰り上げ返済ではなく借り換えを優先です。そして余裕があれば、繰り上げ返済するを実施してみましょう。
仮に借り換えの金利差が1.0%あれば、残返済年数にもよりますが、単月の返済額は1万円ぐらいはラクに下がることが多くなります。しかし100万円を貯めて返済額軽減型の繰り上げ返済を実施しても、月々の返済額は1万円までは下がりません。
月々の返済額を減らすいちばん効果的な方法は、低金利の今なら借り換えです。
全期固定金利型のフラット35でも今なら金利は1%台です。現在抱えている住宅ローンの金利はどのぐらいでしょう? 2%や3%台というなら、間違いなく借り換えを優先するべきです。
たとえば、住宅ローンの総返済額を400万近く減らせるチャンスは、このあと何年も訪れない可能性があります。
まず順序として、借り換えを検討してから繰り上げ返済も想定する。これに異論を唱える人はいないでしょう。
ペアローンを借り換えする際の注意点
ペアローンとは、当該物件に対して共働きの夫婦が異なる2本の住宅ローンを同時に組む方式。
タイプ別に言うと、夫婦がお互いのローンに対して連帯保証する「連帯保証型」の住宅ローンです。
ペアローンのメリットはローン借入額を増額できることですが、それ以外にも夫婦が2つローンの主債務者となることで、住宅ローン控除がそれぞれの持分に応じて受けられること。さらに、夫婦とも団信にも加入できます。
ただしペアローンは、将来奥様が専業主婦に専念したくなった場合、2本同時の借り換えが難しくなります。そのためペアローンを組むのであれば、原則として継続して働くこと、ローン返済に見合う収入を得ることを、はじめに夫婦で確かめ合うことが大切です。
しかしライフプランは変化し、いつどうなるか予測できないのも実情です。その場合を想定するなら、妻側のローン残債を少なくすることを常に心がけ、理想を言えば2本のローンを夫だけの収入でも返済できるよう、できる限り出産前から調整することが求められます。
また銀行によっては、ペアローンを1本化する借り換えが認められた事例もあります。ただし、夫側の十分な収入によることが大きく、誰もが認められることではないようです。
ペアローンは夫婦共働きのメリットを最大にローン生かしたなのですが、ペアローンを採用する場合、妻が専業主婦になるケースがこの先起こるか、十分に検討する必要があるでしょう。
これまでは日本政府は、政策的に金利を下げざるを得なかったことも手伝い、多くの住宅ローンユーザーは借り換えによる金利差益を少なからず得られました。でも今後は分かりませんので、借り換えを考えている人は、早めに動くとよいでしょう。