住宅ローンで他の借金をまとめて一本化できる?

住宅ローンで他の借金をまとめて一本化できる?

そろそろ自分たちもマイホームをと考えていた矢先、気になるのが毎月返済しているカードローンやクレジットカードではないでしょうか?

クレジットカードもカードローンも発行元が銀行のものもあり、特に借金している意識もなく使っている方も多いようですが、これらが住宅ローンの審査に影響がまったくないとも思えません。

どうせ住宅ローンを借りるのですから「こうした細々とした借金と住宅ローンを一本化できるのならラクなのに」などと、考えている方もいるかもしれません。

そこで、住宅ローンを申し込む前に果たして住宅ローンで他の借金をまとめて一本化できるのか、また住宅ローンとクレジットカードなどの借金にどのような違いがあるのか解説します。基本的な知識ですが、とても大切なことです。

住宅ローンでまとめることはできる?

結論から言うと、他社の借り入れなどを、銀行の住宅ローンによってまとめることは原則できません。

理由は色々あるのですが、一番に言えることは、住宅ローンは住宅取得に向けて作られた低金利を設定している金融商品だと言うことです。

銀行のHPに、よく目的別ローンという言葉を目にします。そこには教育資金ローンや自動車ローンなどがよくラインアップされています。住宅ローンは目的別ローンの項目に含まれていませんが、住宅ローンこそマイホーム取得という名目(目的)によって、比較的低い金利が設定されている商品なのです。

いわゆる借金の返済資金は、使い道を限定していないフリーローンでも原則取り扱ってはいません。その理由は、銀行側にしてみれば借金返済は返せなくなるリスクが高く、万一返済不能に陥った場合に担保を取れない貸付だからです。

一方住宅ローンは、審査は厳格に行われていますし、万一返済不能になったとしても抵当に十分な担保を確保しています。これだけ性質の違う融資を同じに扱うのはいろんな意味で無理が生じます。そのため借り入れの返済を住宅ローンで一本化するのは原則無理なのです。

最近では銀行でも一本化ローンと言うものも出ており、複数の消費者金融やノンバンク系のキャッシングでつくった債務を一本化する目的で設計されています。一本化ローンを用意している銀行では、借金を整理したければそちらを勧められるでしょう。もちろん金利のほうも住宅ローンほどではありませんが、銀行のプロパーローンより低めに設定しています。

住宅ローンを組む際に抱えていそうな借金

これから住宅ローンを申し込もうと考えている方が抱えていそうな借金には、どのようなものがあるでしょうか。ここでは、代表的な借金を5つ取り上げ、それぞれの特徴や注意点をまとめてみましょう。

カードローン

カードローンは、あらかじめ決められた限度額の範囲であれば、ATMなどから手軽に貸出金を自由に引き出せるローンカード(キャッシングカード)です。

非常に便利で使い勝手も良いカードローンですが、住宅ローンの審査にはマイナスにしかなりません。なぜならカードローンは、どうしてもカード利用者の支出過多を疑わせるからです。なくても生きていけるのなら作らないでおくか、住宅ローンの審査以降に申し込んだ方が良いでしょう。

ところで、総量規制(※1)以前は、おもに銀行でしか扱いがなかったカードローンですが、総量規制以降は消費者金融などのノンバンク系のカードローンも見られるようになりました。カードローンのイメージが悪化した要因はそこにもあると考えられます。

なお、カードローンは総量規制の対象外になると誤解している方もいるようですが、総量規制の対象外というのは銀行等の金融機関そのものであって(総量規制が掛かってくるのは貸金業者のみ)、カードローンではありません。

貸金業者とは消費者金融やノンバンクのことで、銀行とは管理される法律も違ってきます(ノンバンク系業者は貸金業法によって管理されます)。

住宅ローンの審査では、銀行が発行するものでもカードローンの所有は影響しますが、ノンバンク系のカードローンは消費者金融のカードと同等に見られる可能性がありますので要注意です。

※1 2010年から実施された貸金業者に対する規制で(2006年法案成立)、個人の年収の3分の1までしか貸付できないという規制のこと。総量規制は貸金業法で定められた規制法であって、銀行や生保などの金融機関の貸付は総量規制の対象外です。

クレジットカード

クレジットカードがどういうものか、ほとんどの方が知っているとは思います。ただ、そもそもの始まりは、海外旅行時に現金を持ち歩かないでも決済できるカード(トラベラーズ・チェック)として利用が広まるようになったのがクレジットカードの起源です。

そのため、分割払い機能やキャッシング機能のようなものは、クレジットカードには本来ありませんでした。現在でもアメックスやダイナースクラブには、分割払い機能やキャッシング機能は原則付いていません。クレジットカードはお金を借りるためのカードではなく、キャッシュレス決済ができるカードというのが本来の姿です。

そのためクレジットカードは、基本的に支払いが遅れるなどしていなければ、住宅ローンの審査上、所有していることが直接問題になることはありません。公共料金の支払いをクレジットカード決済している方も多いと思いますが、これもまったく問題がありません。

気をつけたいのは、支払い遅延を起こすことです。

クレッジットカード以外の約定払いのすべてに言えることですが、支払い遅延を起こすとカードの利用履歴にキズがつきますので注意しましょう(支払い遅延の情報はCICなどの指定信用情報機関に5年は残ると言われています)。

またキャッシング機能がついたクレジットカードは(ほとんどのクレジットカードがそうですが)、それだけでカードローンと同等に見られてしまいます。できれば、審査前はキャッシング枠をつけないことも選択肢のひとつでしょう。

ショッピング枠についても、原則一回払い(あるいは手数料の掛からない二回払いかボーナス一回払い)を守って使えば問題になることはありません。ただ、収入に対して枚数を持ちすぎると、利用状況を聞いてくる場合があります。審査前ですとクレカの所有数は多くても3枚までが常識的な枚数ではないでしょうか。

クレジットカードを正しく使えば、全く使わない人より「クレジットヒストリー」が形成できるという点で、信用度が上がるなどメリットもあります。ただ繰り返しますが、返済遅延すると数年間は履歴が残ってしまいます。住宅ローンを申し込む予定がある方は十分気をつけて使ってください。

消費者金融

消費者金融は、使い道を限定しない無担保ローンを、独自に形成してきた審査方法(基準)によって幅広い層に貸付を行い成長してきました。

しかし90年代後半、裁判所の審判によっていわゆるグレーゾーン金利(※2)での貸付が違法と判断されてから、グレーゾーン金利撤廃によって消費者金融は払いすぎた利息の返還(過払金請求)に追われるようになると、中小はおろか、武富士など大手の消費者金融も倒産に追い込まれました。

現在の消費者金融は、銀行の傘下として営業活動を継続している大手数社と、地元に密着した中小業者によって構成されています。主要駅前に店舗が乱立していたピーク時と比較すると、事業規模は相当小さくなりました。

そんな消費者金融ですが、TVやネット広告の露出度は相変わらず高く、大手銀行のグループ会社だということで信用力をアピールしています。
ただ、銀行側でも消費者金融の利用が分かると、同じ銀行グループであっても間違いなく住宅ローンの審査には影響します。そのため、少なくとも消費者金融から融資を受けたまま、住宅ローンの審査を受けるのは控えたほうが良いでしょう。

銀行が消費者金融のユーザーに住宅ローンを貸したがらない理由は、利用者の支出過多を疑わせることと、安易にお金を借りてしまう人だと判断できるからです。

イメージは以前より改善されましたが、消費者金融の利用は大手業者であっても銀行からの信用度は間違いなく下がります。

※2 利息制限法に定める上限金利(年18%など)は超えても、出資法に定める上限金利(29.2%)を超えない金利ゾーンのこと。2010年6月で完全廃止となっている。

車のローン

車のローンは銀行系のローンの他にも信販系のローンもあります。公共交通機関が発達している東京都内では車の所有を諦める方が増えているようですが、公共交通が未発達な地方都市では車は現在でも生活の必需品です。

車のローンは、銀行系のローンでも信販系のものでも、住宅ローンの審査には直接影響しません。また車のローンは総量規制で融資残高がカウントされるということもありません。ただし、住宅ローンの審査を見る場合、むかしから返済比率(※3)を参考にしますので、自動車ローンで年間いくら返済しているかはぜひ把握しておきましょう。

また、いくら車のローンは住宅ローンに影響しないとしても、年収に対して過剰なローンになっている場合はやはり審査には影響してきます。高い車に乗っている場合は、住宅ローンを借りる前に自己資金の一部を車のローンに回すなど注意することが大事です。

返済比率はトータルの年収額によっても変わってきますが、住宅ローンと車のローンを含むその他のローンで、年収(400万円以上)に対して35%というのがひとつの上限と言えます(理想的なのは20%?25%)。

※3 世帯年収に対する年返済額の実質割合のこと。住宅取得費のほかにそれ以外のローン返済額も含めて計算します。返済負担率とも言います。

ショッピングローン

ショッピングローンとは、ネット通販や実際の小売店が、オリコやアプラスといった信販会社と提携して、カードがなくてもクレジット購入を促す販売システムのひとつです。

ショッピングローンを利用しても住宅ローンの審査に影響することはありませんが、金額が大きいと返済比率に影響します(またショッピングローンは総量規制の対象にもなります)。また、ショッピングローンは長期分割払いになるケースが多いため、住宅ローンの審査前はやはり利用を控えておいたほうが無難です。

支払い遅延を起こさなければ問題はないショッピングローンですが、住宅ローンの審査前には一度返せるものは返し、整理しておくことが望まれます。

未使用のクレジットカードを所有していりケースは?

ここで注意してもらいたいことがあります。それはカードローンやキャッシング枠がついているクレジットカードを所有している場合、カードを全く使っていなくても審査上は利用枠分が利用残高として判断されることです。

たとえばキャッシング枠が30万円のクレジットカードを3枚所有していた場合は、キャッシングをまったく使っていなくても合計90万円を使っているとみられます。

ただし、銀行側がクレジットカードの所有が返済比率に掛かっているとみなければ、闇雲に解約を急いでも意味がありません。この場合は、窓口面談の際に、使っていないカードは解約したほうが良いかを融資担当者に相談してみましょう。

なお、解約したほうが良い場合は、カード会社が解約証明書を発行しますので、この証明書も住宅ローン申込時の必要書類に添付することを忘れないようにしてください(解約が不要な場合はこの限りではありません)。

住宅ローンで一本化できる?

冒頭でも言った通り、住宅ローンで借金の一本化は基本的に厳しいですし、現実にはほぼ不可能になっています。

以前は、「厳しいが担当者に相談してみるとよい」などのアドバイスも通用したようですが、それが可能だったのは1990年代以前の話かもしれません。

住宅ローンで他の借金を一本化できなくなったのは、90年代の末頃、銀行が使用している信用情報機関の情報も、クレサラ業界(クレジット・サラ金業界)が使っている信用情報機関の情報も、オンラインで完全に共有されたことが大きいのです。

日本では3つの信用情報機関があります。(株)日本信用情報機構(JICC)、(株)シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)です。以前は銀行であれば全国銀行個人信用情報センター(KSC)の情報しか当たれなかったわけですが、システムが整備されて銀行でもJICCやCICの情報を見られるようになったのです。

信用保証付き融資を利用する際、所定の「個人情報の取扱いに関する同意書」により、個人情報の第三者提供等に関して利用者の同意のもと、金融機関は指定信用情報機関の情報を閲覧できます。ユーザーにしてみれば見られたくない借金の利用もあるでしょうが、すべての貸金業者の情報が調べられるのです。これが整ったのが98年や99年頃でした。

つまり信用情報機関の情報がオンラインで共有されてから、隠せる借金は完全に無くなったのです。

まとめ

住宅ローンと借金の一本化ローンが難しいことが、これでよくわかったのではないでしょうか?

借金のうち審査に影響がないものは大丈夫ですが、影響しそうなものがあるなら、住宅ローンに備えていまから返済しておくことをおすすめします。夫婦で力を合わせれば、それほど時間はかからないはずです。

コツは夫婦間で内緒の借金はやめるということ。内緒の借金は事態をより深刻にします。それと何度も言いますが、支払い遅延を起こさないこと。支払い遅延のダメージは想像以上の大きくなりますのでくれぐれも注意してください。