住宅ローンを自分名義で組んだものの、さまざまな事情があって配偶者の名義に書き換えたいという話を耳にすることがあります。
また、親戚が組んだ住宅ローンの保証人になったが、自宅の住宅ローンを組む時の障害となっているので外したい、というケースも実際にある話です。
ここでは、誰しもが直面するかもしれない住宅ローンの名義変更や、連帯保証人が障害になっている場合の対処方法などについて解説します。
住宅ローンの名義は変更できる?
そもそも、一度組んだ住宅ローンの名義は、簡単に変えることができるのでしょうか。また変更可能だとしても、その手続きや審査はどうなるのかという不安もあると思います。
ここではまず、住宅ローンの名義についての基本的な情報を解説していきます。
住宅ローンの名義と不動産の所有名義との違い
本題へ入る前に、住宅ローンと不動産所有に関する名義の違いを解説します。この2つの違いをよく理解していない方も多いので、ここでしっかりと理解しておきましょう。
住宅ローン名義とは
多くのケースでは、住宅ローンの名義と不動産所有の名義が一致します。例えば、一般的な公務員であるAさん一家が、マイホームを購入するときには、夫で世帯主であるAさんの所得に応じて住宅ローンを組み、家の名義もAさん単独にします。
もちろん、借り入れを増やすために夫婦で住宅ローンを組んだり、さまざまな理由から建物を共有名義にしたりというケースは存在します。
このように、単独名義でも共有名義でもかまわないのですが、その家に実際に居住するかどうかではなく、その家の購入資金として借り入れを起こした住宅ローンの借主になります。
例えば、私が息子夫婦のために家を購入したとしましょう。実際に住むのは息子夫婦ですので、家の名義は息子にします。しかし、建築資金の借り入れは私の名義でしたいという場合、住宅ローン名義はこの私になります。
住宅ローンの名義は私ですから、住宅ローン控除などの恩恵は私が受けることになります。住宅ローン控除とは、住宅ローン名義人が支払っている毎年の所得税から一定の基準に基づいて控除され、確定申告によって戻ってくる制度です。
不動産の所有名義とは
前段でお話をした仮定ですが、ローンの名義は私であるものの、対象の住宅の所有者が文字通り不動産の所有名義人となります。こちらに関しても、対象の建物に居住しているかどうかは全く関係ありません。あくまでも建物の所有者、つまりは権利を持っている人間のことです。
住宅ローンの名義人には、所得税の控除があるとお話ししました。これはメリットということになりますが、不動産の所有名義者になるとデメリットも存在します。
不動産取得税に代表される税金の負担ですが、これはやむを得ないものなので致し方ないでしょう。そのほかにも、固定資産税などの納税義務が発生します。
住宅ローンの名義は変更できる?
例えば、あなたが3000万円の住宅ローンを組んで間もないとします。時間が経っていないので、元本もほとんど減らない状況でしょう。つまり、残債としてほぼ3000万円が残っていると想定されます。
しかも、収入に対して借り入れのできたほぼ限界の金額が3000万円だとします。ところが街の車屋さんで見かけた500万円もする新車をどうしても手に入れたくなった場合、どうすればよいのでしょうか?
手元には現金が一切ないので500万円のフルローンになります。しかし、住宅ローンで与信限界の3000万円を借り入れているので、さらに500万のオートローンを組むことは無理でしょう。
このようなケースで「住宅ローンの名義を妻に変更したらいけるのか?」と考えてもおかしくないですよね。しかし、一般的にこのような変更を銀行は簡単には認めません。
名義変更に合理的な理由が存在しにくい
住宅ローンの名義人を変更するには、債権者である金融機関の承諾を当然必要とします。この場合、金融機関として「どうして住宅ローンの名義人を変える必要があるのだろうか」と思う方が自然です。私が彼らの立場であればそう考えます。
つまり、この疑念を払しょくするだけの理由をもっていなければ、金融機関とすれば「何かおかしいな・・・」となるのも頷けます。
先に書いたように、どうしても欲しい高級車があるから、ローン負債を減らしたいと考えているかもしれません。この場合、返済能力のある妻に住宅ローン名義を変更したとしても、家族全体としての返済負担比率は上がっていますので、ローン破たんを起こす可能性は確実に上昇します。
銀行にメリットが存在しない
いったん話のついた住宅ローンの名義を変更するのは、債務者にとってはメリットがあるから行うわけですが、債権者である金融機関には何のメリットもありません。
ただ手間のかかる作業をするのに加えて、不良債権化するかもしれないというリスクまで背負うことを意味します。なかなか銀行が首を縦に振らない理由には、こういった事情も含まれていると言えるでしょう。
つまり、住宅ローン名義を変更させるには、だれが聞いても納得できる変更理由があるか金融機関にメリットが生じさせるケースに限られると断言してもよいでしょう。こうして推敲を重ねると、次の2パターンが答えになると思います。
金融機関にメリットが生じる場合
住宅ローンを組んでいる本人が年収500万円のサラリーマンだとしましょう。このサラリーマンから「住宅ローンの名義人を親せきのSさんに変えたい」と申し出があったとします。
当初は怪訝な顔をされるはずですが、このSさんという人物が東証一部上場で、従業員4000人を抱える企業の代表取締役社長だったらどうでしょうか。年収500万円の本人よりはるかに所得は高く、さらに残債のない都内一等地に建った大きな邸宅に住んでいるとします。
この場合においては、金融機関としては当該債権の与信力が急上昇します。私が担当者であれば喜んでOKを出します。
夫婦共有名義の住宅ローンだが離婚して片方が家を出る場合
このようなケースであれば、話の筋としては通っているので、ひとまず話は聞いてくれるでしょう。ただし、基本的にはかなり難しいと考えた方が無難です。
金融機関としてはローンの借り換えなどをして、その資金でひとまず一括返済をするならば、という条件を出してくるでしょう。もしくは、名義から抜ける代わりに新たな保証人を立てることを強く要求してきます。
連帯保証人の変更はできる?
結論からお話ししますと、連帯保証人の変更は可能です。ただ、住宅ローンの名義人を変更するのと同様、なかなか難しいことに加えて、そもそも保証人を探してくるのはかなり大変だと思います。
連帯保証人を解消して抜ける方法は?
「保証能力のある保証人を探してくる」答えはこの一言に尽きるでしょう。しかし、すでに述べたように、他人の住宅ローンの保証人になる人を探すのは容易ではありません。しかも、金融機関は名義を抜けた人以上の信用力と返済力を求めてくるので、なおさら大変でしょう。
住宅ローンの名義変更と聞くとややこしそうだし、ましてや連帯保証人を外すなどということになると、考えたことすらないというのが実際のところでしょう。
しかし、簡単にはできないとお話してきましたが、絶対に無理というものではありません。もし、ご自身がその立場になったら、あきらめずに手を尽くしてください。