低金利時代ということもあり、住宅ローンの分野では借り換えがブームとなっています。
ただユーザーが借り換えしたことで、せっかく確定申告までしたのに、肝心の住宅ローン控除が続けられなくなってはどうしようもありません。
そこで今回は、住宅ローン控除はローンを借り換えても継続できるものなのか、について詳しく解説します。
住宅ローンの借り換えとローン控除について
はじめに住宅ローン控除を継続する場合、果たしてローン借り換えを行なっても大丈夫なのか、またどんな点に注意が必要なのかみていきましょう。
控除を継続するための条件
住宅ローン等の借り換えは、従前の住宅ローンを消滅させますので、原則として住宅ローン控除の対象とはなりません。
ただし一定の要件を満たすことで、借り換え後の借入金についても引き続きローン控除を受けられます。ローン控除を継続するための条件を挙げてみましょう。
- 新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためであるのが明らかなこと
- 新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど住宅借入金等特別控除の対象となる要件に当てはまること
(1)については、一般的な借り換えが正しく行われていれば問題はありません。ここで言っている「一般的な借り換え」とは、新しく貸付を行う金融機関の住宅ローンで従前の住宅ローンが全額弁済され、抵当権の抹消等も完了していることです。通常の銀行どうしの借り換えですから問題はありません。
(2)については、住宅ローン控除の要件を満たしていることを言っています。借り換えを行うことで、ローン控除の要件を欠くようなことがない限り、住宅ローン控除は継続できるのです。
なお「住宅ローン控除の要件」については、当サイト『住宅ローン控除(減税)を受けるための条件と計算方法(「住宅ローン控除の条件」)』にて詳しく解説しています。
控除が継続できないケース
ローン控除が継続できないケースというのは、先の2つの条件に反することが考えられます。その中で注意したいのは、借り換えによって住宅ローン控除の必要条件を満たさなくなることです。
たとえば借り換え後の住宅ローンの返済期間が10年未満になってしまっては、ローン控除の必要条件を満たしてはいません。同じく年収が3,000万を超えてしまうと、その年度はローン控除を受けられなくなります。
ローン控除を受けたいと考えている人が、住宅ローンの償還期間を9年にすることは普通なら考えられません。ただうっかりミスは何方にもありますので、「ローン控除を継続するための条件」の(2)は注意した方が良いでしょう。
住宅ローンの額が借り換え直前の残高より増えたらどうする?
このように余程のことなければ、ローン控除が継続できなくなることはそう起こることではありません。ただ注意して付け加えたいことがひとつあります。それは借り換え後の住宅ローンが借り換えする前の住宅ローン残高より増えてしまうケースです。
しかしながらこのケースにしても、それですぐローン控除が継続できなくなることはありません。住宅ローンの借り換えは諸費用が掛かります。それ等を含めて借り換えた場合は、住宅ローンの金額が借り換え前よりも増えることはよく起こります。
そのため借り換え後の住宅ローンが借り換え直前のローン残高より増えてしまうケースについては、対象額を調整する措置が国税庁のホームページに公開されています。
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(1) A≧Bの場合
対象額=C
(2) A対象額=C×A/B
A=借換え直前における当初の住宅ローン等の残高
B=借換えによる新たな住宅ローン等の借入時の金額
C=借換えによる新たな住宅ローン等の年末残高
(措法41、措通41-16)
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「No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき|国税庁」より
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1233.htm
ちなみに下記に示す設定の場合、対象額は次の通りです。
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A=「借り換え直前の住宅ローン残高」=2900万円
B=「借り換え後の住宅ローン金額」=3,000万円
C=「借り換え後の住宅ローン年末残高」=2,950万円
A「借り換え直前の住宅ローン残高(A)」<「借り換え後の住宅ローン金額(B)」の場合
対象額=C×A/B
2,950万円 ×(2,900万円 ÷ 3,000万円)=2853万円
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なおAとBは毎年変わりませんが、Cの「借り換え後の住宅ローン年末残高」は毎年減っていきます。
借り換えで控除の適用期間が延びる?
住宅ローンの借り換えによって、ローン控除の適用期間が延びることはありません。ローン控除は新居に初めて入居した年を含めて、最長10年と控除期間が決まっています。借り換えで新しい住宅ローンを組んだとしても、期間が延びることはありません。
借り換えを行なった年にローン控除期間の残年数が5年だとすると、借り換え後の返済金額が大きく変わらなければ、借り換え後も残年数は5年のまま変わりません。住宅ローン控除に関して言えば、期間は短くなることはあっても長くなることは決してありません。
住宅ローンを借り換えた場合の確定申告
基本的に会社や役所等に勤めていれば、住宅ローン控除の手続きは2年目から年末調整だけで済んでしまいます。
ただし10月以降に借り換えをしてしまうと「借入金の年末残高証明」が変わってしまうことから、年末調整が間に合わない場合が出てきます。そうなるともう一度確定申告をしなければいけません。
こうならないために年末ギリギリ借り換えは避けるべきですが、タイミングによっては11月や12月に借り換えをすることもあるでしょう。
12月に借り換えした場合、新しい銀行から「借入金の年末残高証明」が届くのは年明けの12月です。そうなると年末調整の修正も間に合わず、再度確定申告をしなければなりません。この場合の申請方法と必要書類について説明しておきましょう。
申請方法
申請の前に、勤務先の総務担当者に連絡をして、必要ならば従前の銀行の年末残高証明をもとに行った住宅ローン控除の申請を取り消さなくてはなりません。
これで控除した分を給与から指し戻さなくてはなりませんが、もちろんこの分は新たに確定申告することで戻ってきます。あらたな確定申告の申請方法は一度目の申請方法と同じで、基本的に税務署や市役所等に出向くか郵送またはインターネットで必要書類を送ります。
必要書類
まず「給与所得者の住宅借入金等特別控除申請書」の金額を訂正したもの再提出しなければなりません。
次に源泉徴収票も最新のものを勤務先に再発行してもらうようにお願いします。それと新しい銀行等から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」を用意します。
以上の書類3点に「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「確定申告書A」に必要事項を記載したもを添付し、税務署に提出します。
こうして見ていくとローン控除でとくに注意しなけれいけないのは、ローンの借り換えを年末に実施することです。住宅ローン控除は新しい銀行から残高証明が届くのが年明けにならなければ、年末調整の修正で対応できます。借り換えをする場合は、遅くとも10月までに終わらせるよう注意してください。