不動産担保ローンは不動産を担保にすることで、低金利借入ができる利用者にとってメリットの高い借入手段です。従来は運転資金の借入手段として利用されることが多かったのですが、近年は個人の借り換えやおまとめとしての利用も少なくありません。
しかし、不動産担保ローンによる借り換えやおまとめは必ずしも期待した削減効果が生まれるわけではないのも事実です。結果的に思ったような減額ができなかった、借り換え前と大した違いは生まれなかったという話もよく耳にします。
そこで今回は効果的な借り換えやおまとめとするためにも、どのタイミングで行うのがベストなのか、そして利用時に注意しなければならないポイントについて解説します。
有効的な不動産担保ローン借り換えにするには
不動産担保ローンに限らず、借り換えやおまとめで一番重要になってくるのが借り換え金利です。既存の借入に適用されている金利よりも低金利でなければ、返済額の減額効果が生まれません。
よって、借り換えやおまとめを行う際には、いくらの金利が適用されるのか、それによってどれだけの削減効果が生まれるのかを最優先で考える必要があるでしょう。
しかし、不動産担保ローンを利用した借り換えやおまとめでは、金利面だけを気にしていては期待通りの結果を生み出すことができないのも事実です。無担保ローンでは発生しない多くの諸経費が掛かってくるからです。
それではこの2つを基準にして、最適な利用タイミングについて検証していくことにしましょう。
不動産担保ローンを見直す基準
不動産担保ローンによる借り換えやおまとめの検討時に注力して確認してもらいたいのが下記の2点です。
- 金利
- 諸費用、事務手数料の総額
不動産担保ローンは無担保ローンと違い、多くの諸費用や事務手数料が掛かってくるため、金利面で返済額の減額効果が生まれたとしても、結果的に期待したような減額効果が生まれなかったというケースも少なくありません。
よって、不動産担保ローンを利用した借り換えやおまとめを行う際には、この2つのトータルコストが幾らになるのかが重要になってきます。どれくらいの減額効果を狙っているのかを決定し、それに見合った効果が期待できる不動産担保ローンが見つかった時がまさにベストタイミングとなってくるでしょう。
金利
不動産担保ローンで借り換えやおまとめをする際にまず確認しなければならないのが金利です。金利は低ければ低いほど大きな減額が見込めるので、各金融機関の適用金利がどうなっているのかを比較検討する必要があります。
一口に不動産担保ローンといっても、下記のように提供している金融機関によって適用金利には違いが出ています。
- 住信SBIネット銀行 2.95%~8.90%
- 関西アーバン銀行 4.90%~9.80%
- 滋賀銀行 1.95%~4.875%
- エステートファイナンス 2.40%~15.0%
- アサックス 2.60%~15.0%
※2018年7月現在の数字です。銀行名をクリックすると最新の金利が確認できます。
金利は審査時の評価が高いほど低金利となりますが、不動産担保ローンでは不動産評価額が評価に大きく影響してきます。もちろん申込者の返済能力や信用度も重要視されますが、無担保ローンと比べれば担保物件が審査に与える影響は大きくなってきます。
担保物件の評価しだいでは予想外の低金利適用が受けられる可能性も出てくるというわけです。その可能性を広げるためにも、まずは既存借入の金利と返済総額がいくらなのかを確認し、できるだけ多くの金利差が生まれる低金利先をピックアップして利用先を検討するようにしましょう。
諸費用、事務手数料の総額
不動産担保ローンを利用する際に金利と並んで注意が必要なのが諸費用や手数料の総額です。不動産担保ローンでは下記のように事務手数料の他に実に多くの諸費用が発生します。
- 印紙税 約2万円ほど
- 登録免許税 借入額の0.4%
- 司法書士報酬 6万円~8万円ほど
- 火災保険費用 年間2万円ほど(担保が土地の場合や加入済みの場合には不要)
事務手数料は融資額の約2%が一般的ですから、1,000万円の借入をするとすれば火災保険への加入が必要なくても、総額で30万円程度の費用が必要となってきます。
ここで注意してもらいたいのがこの費用が返済にどう影響してくるかです。もちろんこれら費用は少ないに越したことはないので、まずは各者の費用設定がどうなっているのかを確認し、比較検討する必要があります。
しかし、ここで併せて確認してもらいたのが、金利変動による返済額と諸経費、事務手数料のトータルコストです。仮に下記の様なケースで借り換えを行ったとしましょう。
- 既存借入200万円、適用金利15.0%
- 借り換え200万円、適用金利10.0%、諸費用総額10万円
上記の場合、一見借り換えによる金利引き下げでメリットが生まれているように見えますが、借り換え後の返済期間を1年間とした場合には、下記のように借り換えメリットは全くなくなってしまいます。
- 既存借入 年間利息30万円
- 借り換え 年間利息20万円、諸費用総額10万円
しかも下記のようにさらに借り換え額が低い場合には、メリットがないどころかデメリットとなる借り換えになってしまうケースも出てきます。
- 既存借入100万円、適用金利15.0%
- 借り換え100万円、適用金利10.0%、消費用総額10万円
↓
- 既存借入 年間利息15万円
- 借り換え 年間利息10万円、諸費用総額10万円
借り換え額や返済期間によっては金利面でメリットがあるとしても、諸経費総額を加算すれば全くメリットを生まない借り換えとなるケースも出てきます。不動産担保ローンを利用した借り換えやおまとめは、これら2つのトータルコストで返済額がどれくらい減額されているのかの確認が必要となってくるでしょう。
借り換えやおまとめは必ずしも満足できる結果とならないことを頭に置いて、金利が低くなるから返済額の減額ができるという考えだけはなくすようにしましょう。
不動産担保ローンで借り換えする際の注意点
不動産担保ローンを利用して確実にメリットの出る借り換えやおまとめとするためのポイントを理解してもらったところで、次はより満足のいく結果とするための注意点について解説します。
不動産担保ローンによる借り換えやおまとめをする際に、注意してもらいたいのが下記の5点です。
- 上限金利が低いところを選ぶ
- 目的に会った資金使途があるところを選ぶ
- 返済期間に合わせた金利種類を選ぶ
- 保全率の高い借入を目指す
- 諸費用や事務手数料の安いところを選ぶ
それではこれら注意点について詳しく見ていきます。
上限金利が低いところを選ぶ
不動産担保ローンは○○%~○○%といったように、適用金利には幅が持たされています。借入額や審査結果によって適用金利が違ってくるというわけです。
ここで注意してもらいたいのが、できるだけ上限金利が低いところを選ぶという点です。下記2つの金利設定を比較してみましょう。
- 滋賀銀行 1.95%~4.875%
- エステートファイナンス 2.40%~15.0%
※2018年7月現在の数字です。銀行名をクリックすると最新の金利が確認できます。
特に借入金額が低い場合には上限金利が適用される傾向が強いのですが、仮に上記金融機関で上限金利の適用となれば、10.0%もの金利差が発生します。これは100万円の借入を行った場合、単純計算で10万円もの返済差額が生まれることを意味します。
この点を踏まえ、利用検討する際にはできるだけ上限金利の設定が低いところを選ぶようにしてください。
目的に会った資金使途があるところを選ぶ
金融機関のローン商品は大きく分けると下記の2つに分類されます。
- 目的別ローン
- フリーローン
金融機関では資金使途の縛りが厳しいほど低金利となる傾向が見られます。事実、下記のように資金使途を問わないフリーローンよりも、資金使途が限定された目的別ローンの方が確実に低金利です。
(三井住友銀行)
- 目的別ローン(マイカーローン) 金利4.475%(変動金利)
- フリーローン 金利5.975%(変動金利)
不動産担保ローンにおいてもこの傾向は見られ、下記のように資金使途が限定されているケースが多く見られます。
- 住宅ローン借り換え
- リフォームローン借り換え
- 繋ぎ資金借入
- 不動産投資ローン借り換え
- 事業資金借り換え
つまり、目的の資金使途にあった不動産担保ローンを利用した方が、低金利で借入できる可能性が高くなってくるというわけです。まずは金利がどうなっているのかを確認するのが先決ですが、資金使途にあった不動産担保ローンの方が低金利の傾向にある点は覚えておくようにしましょう。
返済期間に合わせた金利種類を選ぶ
不動産担保ローンの金利は下記の2つから選べるのが一般的です。
- 固定金利
- 変動金利
固定金利は返済期間中に適用金利が変わることはありませんが、変動金利は景気に合わせて定期的な見直しが行われます。景気が良くなれば金利が上がる危険性がある反面、固定金利よりも低金利なのが大きなメリットです。
実際に東京スター銀行不動産担保ローンの金利差を見てみましょう。
- 固定金利 1.3%~9.0%
- 変動金利 0.9%~8.4%
※2018年7月現在
確実に変動金利の方が低金利なのは一目瞭然です。
金利設定は金利の高騰を避けて固定金利を選ぶか、低金利を狙って変動金利を選ぶかのどちらかになりますが、現在の低金利を考えれば数年の短期返済なら変動金利、10年以上の長期返済ならば固定金利を選ぶのが得策となってくるでしょう。
これは借入する人の考えにもよりますが、低金利借入するための1つの判断基準としてみるだけの価値はあるでしょう。
保全率の高い借入を目指す
不動産担保ローンでは担保物権の評価額に対して、借入額が低いほど低金利となる傾向が見られます。評価額が1,000万円の担保物権で100万円を貸し付けるのと1,000万円を貸し付けるのとでは、金融機関が被る貸し倒れリスクに大きな違いがあるからです。
このリスクの高さは保全率によって判断され、下記の計算式で求めることができます。
保全率 = 担保評価額 ÷ 借入額
保全率が高いほど貸し倒れリスクが低いと判断されるため、適用金利が低金利となる可能性が高くなってくるというわけです。保全率は下記いづれかの条件をクリアすることで、高評価を得ることができます。
- 高い評価額が得られる不動産を担保にする
- 借入額を極力抑える
これは借入する人の事情も関係してきますが、保全率を高めることで低金利適用となる可能性が高いことは覚えておきましょう。
事務手数料の安いところを選ぶ
不動産担保ローンの諸費用はどこも大きな差は見られませんが、事務手数料は話が違ってきます。事務手数料は無料のところもあれば、借入額の2.0%としているところもあるように、金融機関によって大きく設定が違ってきます。
事務手数料は最低でも10万円ほど必要となってくるので、この事務手数料が有料か無料かで返済総額に大きな違いが生まれます。先に話したように少額借入の短期返済では金利引き下げによる効果を台無しにしてまうケースも出てきます。金利と合わせて事務手数料が幾らかにも注意するようにしましょう。
まとめ
不動産担保ローンによる借り換えやおまとめは金利もさることながら、諸費用や事務手数料を合わせたトータルコストが成功の鍵となってきます。
金利が安くてもこれら諸費用総額が影響してメリットのない借り換えとなるケースが出てくるからです。このトータルコストでメリットが生まれる借り換えやおまとめでなければ不動産担保ローンを利用する意味はないでしょう。
まずはその試算でメリットが出ることが利用するための最低条件となってきます。この点を踏まえた利用を心がけ、今回解説した注意点を参考にしながら、さらに高いメリットが得られる取引を目指しましょう。